きっかけは、「糸島の野菜ってよく聞くんですが、
那珂川町の野菜ってどうですか？」そんな質問からでした。
今年５月に福岡市内にフレンチレストランをオープン予定の
若きシェフ山下 泰史さん。東京の某有名店で修行の後、
奥さまの実家に近い福岡で開業することに。
福岡にほとんど土地勘のないシェフですが、
「折角なら隠れたいい食材に出会いたい！」と、
那珂川町の野菜に興味をもったそうです。
そこで、こととば那珂川スタッフが一緒に訪れたのが
『ヒデちゃん農園』を経営する通称ヒデさんこと、添田英幸さんの農園です。
ヒデさんの農園があるのは、福岡市内から向かって南畑地区の入り口あたり。
博多南駅前ビルからわずか20分程度なのに、広がっているのは
美味しい水に、緑が重なりあう山に、美味しい空気という抜群の環境です。
農園のすぐ側に実家があるヒデさんは、那珂川町育ち。
実家がもともと兼業農家だったこともあり、
農業には小さい頃から触れ合っていたそうです。
その後、経験をひろげるために、飲食の世界に。
しばらく、昼は農業、夜は別の仕事という暮らしを経て、
本格的な認定農家として１年目を迎えます。
ヒデちゃん農園に入って驚くのが、「一面の◯◯畑」という風景ではなく
いろんな種類の野菜が自由奔放（？）に育っている風景です。
“顔が見える農家”をモットーに、あえて量産栽培のスタイルではなく
多品種の栽培を手がけています。
そのため、「こんな野菜が欲しい」というレストランなどにも対応した
細やかな栽培が可能というわけです。
実際、福岡市内の飲食店や卸販売、ときには直売出店もしているそうで、
旬の野菜がまさにいろいろと楽しめる農園なのです。
まず、案内されたのはヤーコンの畑。那珂川町の特産のひとつヤーコンは、
オリゴ糖の王様といわれ、脂質改善や便秘解消効果などで話題の野菜。
那珂川町では年間５トンほどの収穫があるそうです。
ヤーコンが収穫されるまで眠っている土に、その成長の秘訣があるのだとか！
赤土・黒土の混合土と砂土が混ざっているのがこの辺りの特徴。
砂土と聞くと保水性がないような印象ですが、
ヒデちゃん農園の土は適度に水分を保持していてホクホクしています。
これが掘り出されたばかりのヤーコン。出荷まで土のなかでしばし出番を待っています！
ニンニクが元気に育つお隣の畑は、
無農薬の畑とは思えなほど雑草がありません。
聞いたところ土にキノコの原木チップを鋤き込んでいるそう。
こうすることで、土の中が熱くなり雑草が生えにくくなるのだとか。
通常よりも畝を高くしているのもポイントのひとつ。
こうした工夫を重ねることで、
自然と上手につきあった無農薬栽培ができているようです。
これがキノコの原木チップを鋤き込んだ土。太陽を浴びて温度が高くなってます
雑草だけでなく害虫との付き合い方もヒデさん流。
「もともと害虫という概念がないんですよ。
その頃に出てくる虫たちは、そんな時期になりました！
とお知らせしてくれる存在なんです」と語ります。
そんな良い土壌に植えるものにもこだわりがあります。
遺伝子操作などがされていない、
オーガニックの種を中心に栽培しているそうです。
途中、収穫期を逃した小ぶりな人参を掘り起こして、
ザッと土を落として食べさせてもらいました。
その自然な甘さには一同驚きです。まさに“素材の味”が美味しい野菜。
ドレッシングやマヨネーズに頼らず、人参の味が堪能させてもらいました。
那珂川町といえば、那珂川の上流のまち。
そんな立地で農業をするヒデさんにとっては、
「もしも上流を汚してしまったら、下流で暮らす人達に申し訳ない」
という思いも農薬を使わない一つの理由なのだとか。
ときには農園メンバーと川の清掃作業も行ったり、
海ではサーフィン後にゴミを拾って帰ったり、自然との関係も大切にされています。
収穫時期を逃したとはいえ、人参はまるかじりで味わえるほど甘くて絶品！
顔が見える野菜づくりの実践のために、
ヒデちゃん農園が野菜を卸す飲食店やお店の方には、
２カ月に１回程は畑を見に来てもらって農園の現状を見てもらっています。
作る人も、食べる人も、土や自然に敬意をもったり、信頼関係を図れたり、
とてもよい機会になっているようです。
那珂川町初訪問のシェフでしたが、「近い将来に那珂川町に住んで、
朝から農業を楽しんで、それから採れたての野菜で極上のフレンチを提供したい」と、
新たなお店の構想が広がっていました！
【ヒデちゃん農園】
住所：那珂川町不入道554
facebookページ：「ヒデちゃん農園」で情報発信中！
